尾ぐされ病の治し方

  

尾ぐされ病は熱帯魚の体の一部分が白くなり、最後はエラまで広がり呼吸困難になる病気です。

上の写真のオレンジ色の枠内を見てください。ネオンテトラに感染したカラムナス菌が寄生している箇所は、白く変色しています。

尾ぐされ病は常在細菌(水槽内にいる細菌)である、カラムナリス菌が熱帯魚に寄生することで発生します。

早期発見と治療の開始で完治する可能性はあります。治療薬が何種類か販売されています。

このページでは具体的な治療と薬浴の方法を説明しています。

尾ぐされ病の原因菌は、フレキシバクター・カラムナリス菌です。グラム性細菌の一種です。

このグラム性細菌だけを狙い撃ちして殺菌できるのはオキソリン酸です。

オキソリン酸が含まれている液体の治療薬は、「グリーンFゴールドリキッド」です。

適量を量るのも細粒タイプの治療薬に比べて簡単です。

グリーンFゴールドリキッド

治療薬の右側に写っているのは、「コスメティック・シリマー」です。

化粧品などを携帯用のボトルに入れる時に使うコスメ用品です。ダイソー100均で売ってます。

0.5ml単位で目盛りがあるので便利です。しかも税別100円です。

グリーンFゴールドリキッドは、水草やエビへの影響が少なく、尾ぐされ病の治療が可能です。

但し、影響がゼロではありません。クリプトコリネの葉が数枚溶けます。ウィローモスも一部が枯れたりします。

ヤマト・ヌマエビやミナミ・ヌマエビなどは、熱帯魚よりも捕まえやすいので、薬浴する水槽から隔離した方が無難です。

コリドラスは動きが鈍くなります。コリドラスが居る水槽は注意が必要です。ナマズ類は薬浴に弱い魚種です。 

オキソリン酸を含む治療薬

オキソリン酸を含む熱帯魚用の治療薬には、「観パラD」もあります。オキソリン酸の含有量は1mL中、50mgです。

「グリーンFゴールドリキッド」の含有量が1mL中、5mgです。

「観パラD」が濃度10倍です。値段は「グリーンFゴールドリキッド」の方が安いです。

どちらも日本動物薬品㈱「ニチドウ」が販売元です。

細菌性の常備薬として、殆どの熱帯魚屋さんで販売しています。通販でも買えます。

「グリーンFゴールドリキッド」は、エビ類はビーシュリンプ以外は平気でした。

観パラDはオキソリン酸の濃度が高い治療薬です。隔離水槽で薬浴する方法が最適です。

薬浴は規定量を必ず守ってください。 間違えると毒薬になります。

理由は、オキソリン酸を含む治療薬のpH(ペーハー)が11になる超アルカリ性だからです。

水量が少ない場合、pH(ペーハー)の激変は避けられません。

pHショックで全滅する可能性もあります。

治療薬を計量する方法

治療薬に規定量を計る計量カップが同梱されていますが、0.5ml単位の微量は測れません。

微量を計るスポイドと軽量カップのセットか、美容用品のコスメティック・シリマーが必要です。

治療薬の軽量カップ

薬浴の方法は水量が多い、水槽全てを薬浴する方法をオススメします。

隔離水槽は、一般の方ですと小型水槽になると思います。治療薬の投入量が微量になります。

病気が発生していない他の熱帯魚と一緒に、本水槽とフィルターも薬浴した方が無難です。

治療方法のポイント

治療を簡単に、そして生体に出来るだけ負荷を掛けない方法として、サテライトを使う方法をオススメします。

水槽全てを薬浴する方法です。細菌性の病気を治療して再発を抑えるには、早期発見と素早い治療開始が必須です。

シリコンチューブは数百円で買えます。治療薬の薬浴による着色や硬化の心配よりも生体の完治に注力しましょう。

水槽の接合部にあるシリコンが着色する前に、サテライトの中で希釈されて治療薬の色が薄まります。

サテライトを使うと水槽接合部の着色を回避できますし、とにかく、すぐに治療を開始出来るのが最大の利点です。

メリットは更に二つあります。

一つは、サテライトから、少しづつ治療薬を水槽に加えることでpH(ペーハー)の激変を避けることができます。

二つ目は、サテライトを使えば隔離の手間が省けて直に薬浴が開始できることです。

隔離水槽をセットして水温、pHを確認し逃げ回る小型熱帯魚を捕まえることを考えると「面倒くさい」と思いますよね。

逃げ回る小型熱帯魚を、水草や流木が多く入った水槽の中で捕まえるのが一番難しいです。

病気になった小型熱帯魚が逃げなくて、直ぐに捕まえられた時は病気が重症化している証拠です。

その時は、ある程度の覚悟を決めて治療を開始しましょう。

治療開始を後回しにすると完治は困難になります。

すぐに薬浴を開始すれば完治の可能性が高くなります。

濾過バクテリアは時間と共に復活します。

病気が発生する環境ですので、一度、水槽全てを薬浴した方が再発を防ぐことができます。

サテライトを使った薬浴の方法

飼育水を半分換水してください。活性炭フィルターやゼオライトなどは外してください。

また、照明・二酸化炭素の強制添加は止めてください。

本来は稚魚などを隔離して飼育するアクア用品です。下の写真のような使い方です。

スドーのサテライト外箱

 

サテライトを使った水槽全体の薬浴にはには、エアーポンプとエアー分岐のコック、エアー調整用の弁とホースが必要です。

どれも数百円で買えます。下の写真が必要な機器一式になります。

シリコンチューブが着色していますが、生体の水合わせや他の用途に使っても何ら問題がありません。

病気の蔓延防止か数百円か、どちらが大切かは管理者の価値観になります。

サテライトの使い方

サテライトに治療薬を入れてください。

その後、エアーポンプで飼育水を押し上げてサテライトに落として行きます。

飼育水を落とす量とエアーストーンから酸素を供給する量は、写真の上側に写っている2分岐のコックで微調整できます。

エアーの量は微量で大丈夫です。サテライト内で飼育水と治療薬が混ざります。

その後、1秒数滴、治療薬が混ざった飼育水が水槽内に落ちて行きます。

この状態になれば、後は何時間でも放置しておけます。酸欠の心配もありません。

病気の熱帯魚は酸欠になりやすいので、エアーの供給は大事です。

グリーンFゴールドリキッドで薬浴する時のコツ

薬浴を行う日数は5日から7日間と、日本動物薬品㈱「ニチドウ」のホームページに書いてあります。

尾ぐされ病は、完治まで長く掛かります。3日から1週間くらいを目安に薬浴してください。

エサは普段の半分くらいを与えてください。絶食すると、魚の体力が落ちて病気が治りません。

私は、3日連続で薬浴した後、半分換水します。翌日も半分換水します。

3日間、薬浴した後は二酸化炭素の添加と照明点灯を再開します。

3日連続の薬浴の後は、2日間は薬浴を止めて様子を見ます。

治りが悪い場合は、2度目の薬浴を3日間行います。

尾びれだけの発生であれば、この方法で治る可能性はあります。

口先に発生した場合は、完治した経験がないです。口先からエサが食べられない状態になると体力が落ちます。

発病した個体の口先に、スポイドやピンセットで栄養価の高いエサを与える方法で口ぐされ病が完治した話は聞きます。

日本動物薬品㈱「ニチドウ」の質問ページに薬浴の方法が記載してあります。コチラをクリックすると、質問ページが表示されます。

コックを使った調整方法

尾ぐされ病の発生原因と再発防止の方法

水槽内、自然界に存在するフレキシバクター・カラムナリス菌が熱帯魚の皮膚に寄生して増殖します。

進行が速い病気で、エラに感染すると呼吸困難になります。その場合、完治の可能性は極めて低くなります。

細菌が感染する熱帯魚の病気は、死亡原因の中でも多いです。また、白点病と比較すると致死率が高い病気です。

発生の原因は複数考えられますが、ヒーターの故障で水温が急低下した場合は、発生する可能性があります。

尾ぐされ病について書いている、このページへのアクセス数は気温が変わりやすい秋から冬場、春先に急増します。

冬場や季節の変わり目は、気温の低下や急変で人間もインフルエンザや風邪で体調を崩しますが、熱帯魚も同じみたいです。

水温が一日の間に2度以上変わらないよう、注意してください。

ヒーターは水槽の中で何の前触れもなく、音や振動も発生せずに故障するのが困った点です。

朝起きて水槽を見たら「熱帯魚の様子がおかしい」、水温計をみたら「18℃になってる!」。私も経験者です。

電子水温計は電池式タイプであれば、900円前後で売ってます。私も長年使ってます。

季節の変わり目は、水温管理にも注意してください。下のグラフ、オレンジ色の下線が細菌系の病気になります。

ヒーターを2個以上設置する理由

ヒーターは故障しても、水槽管理者には分かりません。分かるのは水温が急低下した後です。熱帯魚の異変で気づく場合が多いです。

水温が急低下すると、熱帯魚の免疫力が弱くなります。皮膚を保護している粘膜の力が弱くなり、病気に感染する確率が高くなります。

熱帯魚が感染する病気の大半は、水槽に普段からいる細菌などが原因です。免疫力が弱くなると、普段は感染しない病気になるのは人間と同じです。

縦型ヒーター

縦型ヒーターはレイアウト水槽にも最適です。後景草の後ろに隠して設置することができます。

上の写真は80Wヒーターです。26Lまで対応しています。1個は横向きの100Wを設置しておけば、60cm水槽のバックアップとして十分です。

横向きヒーターは、レイアウトの邪魔になります。縦型はソイルから10cm以上の高さに吸盤なしでブラ下げて設置できます。

水草を植えたい場所にヒーターが無いのは、アクアリストにとってメリット大です。流木や岩を置く底面から、ヒーターがなくなります。

ヒーターを隠したい方も、そうで無い方もヒーターはバックアップを入れておくと、尾ぐされ病を予防できます。

ヒーターは故障する物と思って、2個以上設置することをオススメします。

小型熱帯魚の尾ぐされ病は、完治が難しいです。予防が大事だと思います。

ヒーターに適度な水流は必須

ヒーターが正しく動作するには、適度な水流をヒーターの周囲に作る必要があります。

ヒーターの温度センサーに水槽全体の水温を正しく感知させるため、水流が必要です。

水流が殆どない場合、ヒーターの温度センサーがヒーター近くの水温で判断して動作を止めます。

水温が上がらずに悩んでいる方は、排水口の近くや、水流がある所にヒーターを移動してみてください。

ヒーターを隠すため、有茎草が生い茂った根元に隠すと水流があたらず、水温を誤って感知する場合があります。

場所を変えるだけで、水温が安定するケースが多々あります。

大半のヒーターは、26℃にプリセット(事前に温度設定)されています。

ヒーターから離れた場所と、ヒーター近くの水温に差が出ます。3℃くらい差が出る場合もあります。

病気の原因と対策一覧表

原因 対策
ストレスなどで皮膚が荒れて粘膜が薄くなる 過密飼育を避ける。水草を増やし、弱い個体の逃げ場を作る
季節の変わり目で水温が急低下した 夏場にもヒーターを設置。ヒーターは2個以上を設置して、1個が壊れた時の水温急低下を防ぐ
水槽のpHが熱帯魚に合っていない 中性から弱アルカリ性を好む熱帯魚をpH6以下で飼育すると粘膜がただれる。pHを測定した後、徐々に適正値に戻す
過密飼育(水槽サイズに適した生体数を超えている)による飼育水の過剰な汚れ 換水を頻繁に行うか水槽を増やす
エサ不足による体力低下 エサが取れず痩せている個体がいないか観察する。混泳の場合は、エサの与え方を工夫する

まとめ

小型熱帯魚は体が小さく体力が無いので、病気の治療が非常に難しいと思います。

熱帯魚屋の店員さんと話しても、相談の大半が病気の治療方法と聞きます。

店頭で相談したり、治療薬を探している人を良く見かけます。

しかしながら、サイトの中には金魚やコイの治療方法と混同している情報も見かけます。

何か貢献できることは無いかなと考え、このページとサイトを立ち上げました。

正しい治療方法で早めの薬浴を実施してください。

何よりも大事なのは病気の予防だと思います。

病気の完治と、楽しいアクアライフを過ごせることを願っています。

サイト管理人の自宅水槽

自宅の水槽写真

水槽スペック

  
  • 立ち上げ時期:2019年5月(引越しに伴い水槽リセットしました)
  • 設置場所:マンション2階の自宅個室(ベッドの真横)
  • サイズ:Gex 90cmハイタイプ 900mm(横幅)*500mm(高さ)*400mm(奥行き)
  • フィルター:エーハイムEF500(メイン)+エーハイムEF500(サブ)1セット、エーハイム2211(メイン)+エーハイム2211(サブ)1セット
  • クーラー:ゼンスイZC100にエーハイム水陸両用ポンプ1048を接続して循環
  • 水替え:3日に1回、8リットルのバケツ3杯分(24リットル)を交換
  • 水質調整剤:テトラアクアセイフ、ADAのブライティーK、ADAのECA
  • 底床:10年以上使っている大磯砂の上に、ADAアマゾニアライトを約5cmの厚さで使用中
  • 生体:カージナルテトラ10、レッドファントムテトラ(ルブラ)8、コリドラスパンダ2、ランプアイ8、オトシンネグロ1、ミクロラスボラ・ハナビ5、ラスボラ・ヘテロモルファ7、ミクロラスボラ・ブルーネオン8、ヤマトヌマエビ5、ミナミヌマエビ約10
  • 水草:前景草(左側)はエキノドルス・テネルス、前景草(右側)はクリプトコリネ・ウェンティーグリーン、中景草はテネルスとブリクサ・ショートリーフ、後景草はバリスネリアとニューオランダプラント、ロタラ、クリプトコリネバランサエ
  • メインプラント:水槽真ん中にミクロソリウム
  • 流木:30cm前後の枝状流木を5個前後使用。アク抜き後にノコギリで分解して好みのレイアウトに組み立てたが、水草育成後は殆ど見えない
  • エサ:テトラフィン、テトラプランクトンを1cm四方のマス目1個分で1日1回、照明点灯後30分くらいに投下、底モノのコリドラスパンダ用にタブレットを2個投下

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